5月6日(火)から24日(土)まで、画家一色ちか子の「花になるドキュメント」展を開催します。
一色ちか子は東京都大田区に生まれ、1969年に東京芸術大学美術学部絵画科卒業日本画専攻。西村画廊での初個展となる今回は、<花>をテーマとした絵画を発表します。
描かれているのは、バラやボタンなど、華やかな種類の花々ばかりです。しかし一色が注目し描き続けるのは、観念的な美しさではなく、生々しさやいびつな部分をも含んだ、花のありのままの姿なのです。
一色は、花を「人間社会のドキュメント」に例えています。そもそも、一色が<花>というオーソドックスなモチーフを描き始めたのは、自宅の室内を彩るためにたまたまテーブルに置いたチューリップの花の、意外にも周囲に馴染まずに孤高を保つ凛とした姿に惹き付けられたことがきっかけでした。一体花の持つ何に惹かれるのか、それを確かめるため一色はチューリップの写真を撮り、更に写真を元にして描くことを試みるうち、花びらや雄蕊・雌蕊等のそれぞれが意志を持って自分を主張するようでありながら、同時に皆で一つの花を作り上げている、その成り立ちにこそ鍵があると気付いたのです。
互いに牽制し合ったり、引き立て合ったり、まるで人間どうしのようにさまざまな関係が、一輪の花の中でも繰り広げられています。花を撮影して描くことは、その幾重にも重なる関係の顛末を追って見届けることに通じると、一色は言います。
本展は十数点の油彩画で構成されます。牡丹園に咲く花を色や数を違えて描いた「静かな時」シリーズ、同じ一輪のバラの花を順光と逆光の2枚の写真を元に描いた「光の中で」のシリーズ、一株のシクラメンの花々が群れ咲く「午後」、黄色い八重咲きのチューリップが一輪、画面いっぱいに広がる「穏やかな朝」等、実物よりもはるかに大きく、また丹念に描かれた花々が集います。一色ちか子展にどうぞご期待下さい。
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