2002年の第1回展覧会はDavidHockneyの版画展です。
西村画廊では1974年の開廊の年からホックニーの作品を紹介し続けてきましたが、今回の第24回ホックニー展では1973年制作のEve
Marie
(イヴ・マリー リトグラフ)から1998年制作(2001年発表)の"Grass
and
Bottle"(グラスと瓶・エッチング)迄、約40点を回顧的な構成で展示します。
ホックニーはロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アーツ(王立美術学校)在学中から特に版画の制作には力を入れ、25歳の時には早くもニューヨーク近代美術館で版画作品の個展を開くという天才振りを発揮してきました。エッチングではハード・グラウンドやシュガー・リフトなどの技法を早くからマスターして、様ざまなスタイルの傑作を生み出してきましたが、エッチングのほかにも描写に於いて熟練の極地を見せるリトグラフを始め、かつていかなるアーティストもなし得なかった実験的な作品をを発表し続けてきました。カラーコピー機を空間の無いカメラとして捕らえ、インクの代わりにトナーを用いるという、まったく新しい技法で創り出したカラー・コピー版画や、1枚の写真が何故長時間見るに耐えないか、という疑問からスタートして革命的な多層写真を生み出したフォト・コラージュ、8x10の大型カメラで撮影した写真を膨大な情報量を処理できる特殊なインクジェットプリンターを使ったデジタル・プリントなど、ホックニーがプリント・メディアに於いて創造してきたことの殆ど全ては、長い版画の歴史には無かったものだったのです。
今回初公開される"Grass & Bottle"、や"Four Flowers in
a
Vase"では、今日の日常生活に氾濫するペット・ボトルを輪郭を描かずに光と影で描写、卓上と壁は寒冷紗のような布を銅版上で腐食させて表現するという、ホックニーの独擅場ともいえる技法を用いて、かつて消費文明を題材としたポップ・アートの原点を想起させるような機知に富んだエッチングとなっています。
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